誰しも、心と体に染みる食体験があると思います。
それは豪華なものではないことが多い。

btは紅茶と肉うどんですが、今回はこっちの話。

ロシアの文豪ドフトエフスキーの「地下室の手記」に、一杯の紅茶があれば世界など滅びても構わない。という一節がある。

btは昔そんな思いを確かに、した。

中学の頃、晩秋のバス釣りに疲れ果ててたどり着いた古い喫茶店で飲んだ一杯。
冷え切った手、のどを焼く紅茶の感触はまさにそれだった。
それはもう、一気に飲み干すしかなかった。

あの"感覚"をまた味わいたくて、btはいつも冬の釣りに熱い紅茶を持っていく。が、近い感覚に触れることしかできないでいる。 

あの日…
ボウズ、ルアーのロスト、遠い帰り路、明日は学校…心のしんどさをさらにえぐる夕暮れの寒さが、小さなbtの「世界」をさらに狭くしていたのかも知れない。

それなりに心に闇を背負いつつも、バカになってしまった大人にあの感覚は甦らないのだろうか。


btの好きな3つの紅茶
1番よく飲むのはアールグレイ
ベルガモットが高貴に香る正統派のフレーバーティーはティーバッグでも十分美味しい。

リーフで飲むならディンブラ
セイロン紅茶は赤が美しく、インド紅茶ほど強すぎず飲みやすいのがいい。

3つ目は個性派のラプサンスーチョン。 
松葉でスモークされた中国紅茶は独特だ。
英国では上流階級が東洋への憧憬として、そのミステリアスな芳香を好んだと聞く。

どれもスプーンが立つほど濃く淹れて、ミルクティーにするのが好きだ。

世に釣り人との出会いが少ないように、紅茶を好む人に会うことも滅多にない。
およそ左党か珈琲を好む。

それはそれでいい。
ちっぽけなやるせなさを思いながら、今日もアールグレイにミルクを注ぐ。
根魚カーニバル行きたかったなぁ。